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川柳作家やすみりえがアドバイス! 「膝ポン川柳」作句のすすめ

川柳は別名「膝ポンの文芸」とも呼ばれています。「それ、わかる!」と他人の共感を呼び起こすところに値打ちがあるものなので、無理して大きな事件や特別な出来事を詠む必要はありません。
日常生活の中で起きたささやかな出来事を、さり気なくスケッチするところに川柳の楽しさや魅力があるのだと私は思っています。作句のポイントは、暮らしの中のどんなところに目をつけ、それをどう「五七五」の言葉にするかです。そのヒントを紹介していきたいと思います。

Point1

「かわいい」を詠む ちょっとした心の動きを感じた瞬間こそ、川柳の詠みどき。

世の中には「かわいい」ものがあふれています。「かわいい」は何も女性だけの感情ではありません。
何かを見て心が動いたり、目を奪われることが「かわいい」だとするならば、これは男女共通。その代表は、何といってもお子さんやお孫さんの姿です。あるいは、犬、猫などのペットも、とても身近な「かわいい」存在ですね。女性の場合は、スイーツにまで「かわいい」を感じることもあるでしょう。そんなちょっとした心の動きを感じた瞬間こそ、川柳の詠みどき

何かを見て「かわいい」と思ったら、なぜそう思ったのかをよく考えてみる。その姿が身のまわりにいる誰かに似ているのかもしれませんし、しぐさに心を奪われたのかもしれない。いろいろな角度から観察して「かわいい」理由を考えてみましょう。ちなみに、かわいいものを詠むときには、「かわいい」という言葉を句の中で使わないのが鉄則です。

Point2

「たのしい」を詠む 川柳は、いろいろな出会いの場に誘ってくれる役目も果たしてくれる。

女子会、PTA 、サークル、あるいは数年ぶりに同級生と顔を合わせるクラス会や同窓会など、集まりにもいろいろありますが、久しぶりの友人に会うワクワク、ドキドキする気持ち、自分がどう見られるんだろうという緊張感や、時代が逆戻りするような解放感が、こうした集まりを「たのしい」に変えてくれます。そんなときが、いい川柳を作るチャンス。

心の中で写真を撮るつもりで一句作っておけば、貴重な集まりを記憶に残すこともできます。このような場に行って、一つでもいい作品ができると、それだけで人の集まりに顔を出すのが楽しくなってきます。川柳は、いろいろな出会いの場に誘ってくれる役目も果たしてくれるのです。

Point3

「らくちん」を詠む 「らくちん」の裏側にある人間関係の面倒くささなど、一瞬、後ろ向きになったときが句作のチャンス。

身のまわりに電化製品があふれ、さらにはスマホやタブレットの普及でますます世の中は便利に、「らくちん」になってきました。掃除洗濯は機械任せにできますし、手紙を書いたり辞書で調べたりすることもなくなり、「らくちん」にはなってきたのですが、その一方で機械に置いてきぼりにされているような気がすることも…。よっぽど使いこなしている人でもない限り、こういう感覚は誰もが持っているのではないでしょうか。

サラリーマン川柳にも、ソーシャルアプリなどSNSに関係する悲哀を詠んだ句が増えています。「らくちん」の裏側にある人間関係の面倒くささなど、一瞬、後ろ向きになったときが句作のチャンスかもしれません。

Point4

「いとしい」を詠む 決してよそいきではない、ありのままのその人の姿を見つめ、それを句にする。

親子や夫婦のように、互いに助け合いながら長年一緒に暮らし、まるで空気や水のように当たり前の関係になると、さすがに相手を見て「かわいい」とか「愛してる」と言葉にはできません。むしろ、それでは軽すぎる。自分が誰かに愛され、大事にされている、その感謝や愛情を言葉にするとすれば「いとしさ」に尽きるのではないでしょうか。

決してよそいきではない、ありのままのその人の姿を見つめ、それを句にする。私は、このジャンルの作品こそが川柳の王道だと思っています。例えば、夫婦の会話を題材に、その中では皮肉めいたことを言いながら、実は互いに微笑み合っている姿が見えてくるような、むしろ愛情を感じさせる句が、サラリーマン川柳でも少なくありません。「いとしさ」を遠回しに表現する、そこに川柳の役目があるような気がします。

Point5

「五七五」の形式を守る 五七五の定型の心地良さが、より多くの人たちに作者の思いを伝える助けになります。

サラリーマン川柳に応募される作品を眺めていて少し気になるのは、字余りになっている句が多いことです。特に真ん中の七音が、八音になっていることが多い。川柳の世界では、これを「中八」と呼んで戒めています。たくさんのことを伝えたい気持ちはわかりますが、中の七音は着物でいえば帯に当たる部分。帯が緩んでいると着崩れたように見えますし、いわば句全体がだらしなく緩んでいるように見えてしまうのです。

もし、「中八」になってしまいそうなときも、あきらめず七音の言葉を探し続けてください。五七五の定型の心地良さが、より多くの人たちに作者の思いを伝える助けになります。そのことを頭に入れながら、楽しい川柳ライフを送っていただけると幸いです。

川柳作家 やすみりえ

恋愛をテーマとした独自の川柳作品を発表するかたわら、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等の川柳コーナーの選者を多数務める。著書に句集「召しませ、川柳」、監修本「50歳から始める俳句・川柳・短歌の教科書」他。文化庁文化審議会国語分科会委員。全日本川柳協会会員。

川柳作家  やすみりえ