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川柳作家やすみりえがアドバイス! 「膝ポン川柳」作句のすすめ

身の回りのさまざまなことを詠める川柳は「膝ポンの文芸」とも呼ばれます。「この場面、わかる!」「そういう気持ち、あるよね!」と共感を得る一句は、言い換えれば多くの人に愛される一句になるということでしょう。《サラっと一句!わたしの川柳》ではそんな五七五の作品にたくさん出会えたら嬉しいですね。まずはどんなふうに川柳を詠み始めたら良いか、そのヒントをご紹介していきます。

Point1

「自分自身」を詠む ちょっとした心の動きを感じた瞬間こそ、川柳の詠みどき。

川柳は「人間を詠む」五七五です。喜怒哀楽の感情や、日常のちょっとした出来事さえも題材にしてOK。他の誰でもないアナタの伝えたいことを自由に表現することができます。
もし「何を詠んだら良いかわからない…」と思ったら、今の自分自身をちょっぴり見つめてみてはいかがでしょう。心のつぶやきが川柳になることも多々あります。
過去を振り返っての一句や、未来の自分への想いを一句に込めることも良さそうです。
また、誰かに伝えたい言葉があれば、それを五七五にしてみるのも素敵ですよ。

Point2

「世の中」を詠む 多様な角度から時代を見つめて。

「川柳」と聞くと、社会風刺や諧謔、批判精神をイメージする人もかなり多いように見受けます。それはおそらく「時事川柳」というカテゴリーがあるからなのでしょう。社会風刺川柳を詠む際の注意点としては新聞の見出し的な五七五は避けるということ。すでに起きた事件や事故は事実として周知されているのですからそれを同じような五七五にしても魅力を感じられません。
一方で、明るいニュースや時代ごとの流行なども川柳に詠むと楽しいものです。
ぜひ「世の中」を色々な角度から切り取ってみてください。

Point3

「五七五」の形式を守る 五七五の定型の心地良さが、より多くの人たちに作者の思いを伝える助けになります。

『サラっと一句!わたしの川柳』に応募される作品を眺めていて少し気になるのは、字余りになっている句が多いこと。特に真ん中の七音が、八音になっていることが多いです。川柳の世界では、これを「中八」と呼んで戒めています。たくさんのことを伝えたい気持ちはわかりますが、中の七音は着物でいえば帯に当たる部分。帯が緩んでいると着崩れたように見えますし、いわば句全体がだらしなく緩んでいるように感じられてしまうのです。
もし、「中八」になってしまいそうなときも、あきらめず七音の言葉を探し続けてください。五七五の定型の心地良さが、より多くの人たちに作者の思いを伝える助けになります。定型の魅力を味わいながら、楽しい川柳ライフを送っていただけると幸いです。

叙情的な川柳を発表し続けながら、多数の公募川柳コンテストの選者・監修を務める。幅広い世代へ向けて川柳教室やワークショップを開催し、言葉を紡ぐ楽しさを伝える活動も。著書に句集「召しませ、川柳」、監修本「50歳からはじめる俳句・川柳・短歌の教科書」等多数。
全日本川柳協会会員。日本文藝家協会会員。令和3年度文化庁長官表彰。

川柳作家  やすみりえ